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2018年8月 6日 (月)

「これまで20年、誰も使ってくれなかった」 山梨県北杜市の"かいこがね"ホップを収穫して、新しいIPAを仕込みました

8月2日、サンクトガーレンは今夏も山梨県北杜市の浅川さんの畑にホップ収穫のお手伝いに行ってきました。

ホップはビールの主原料の1つで、ビールに華やかな香りと爽快な苦味をもたらしたり、泡立ちを良くしたりする役割を持ち“ビールの魂”と言われます。

今年も山梨県北杜市にホップ収穫に来ています。 この地域で誕生した“かいこがね”という品種です。 例年ここは涼しいのですが、今年はさすがに暑い😵☀️💦

SanktGallenBrewery / 元祖地ビール屋 サンクトガーレン さんの投稿 2018年8月1日水曜日


北杜市は日本のホップ栽培発祥の地と言われ、大手メーカーとの契約により、昭和初期から50年以上も継続してホップ栽培が広く行われていました。

▼北杜市にある「ホップ栽培発祥の地」石碑

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石碑の裏にはこう刻まれています。

ホップは従来、其の大部分を国外よりの輸入に頼りつゝあったが、昭和十四年(1939)当時内外の状勢は緊迫の度を加え、これが需給の悪化が予想されたため、国内における生産の確保と本県農業資源の開発および当地方の特産作物として、これを導入することは誠に時宜を得た事業であることを認め、時の郡農会長、後の初代ホップ組合長井出和重氏は、キリンビール株式会社との契約栽培により、ホップの生産企図推進した。以後急速に増殖が進み広く県下にわたり栽培されるに至った。
栽培開始以来五十五年目を迎えるに当り、其の発祥地として碑に刻み此の地に建立し、以って後世に伝えんとするものである。  


ところが1993年、大手メーカーの輸入ホップへの切り替えとともに契約が終了。

北杜市のほとんどの農家がホップ栽培を止め、“かいこがね”も姿を消していきました。

それから約20年。

浅川さんは、義父が発見・改良に関わっていた“かいこがね”種を絶やしたくないとの思いで、使われるあてもなく1人で細々とホップ栽培を継続していました。
つくっては廃棄して、つくっては廃棄して…。


▼浅川さん(右)と、サンクトガーレン社長の岩本(左)

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2012年、浅川さんのことを知った私たちは、以来毎年かいこがねホップの収穫のお手伝いとをするとともに、そのホップをビールに使わせて頂いています。

かいこがねは漢字で書くと「甲斐黄金」。
甲斐(山梨)で生まれた、黄金色のホップが名前の由来。

かいこがねは若いときにはご覧のような黄緑色をしていて、成長とともに濃い緑へと変わっていきます。
香りは柑橘系で、少し金柑を思わせる"和"な雰囲気があるのが特徴です。

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ホップの収穫はツルを特製の鎌で切り落とすところからスタートします。
ホップはツル状の植物で、あさがおのように上へ上へ巻き付いて伸びていきます。
根はそのまま残しておき、また来年ここからホップが伸びていきます。

切り落としたホップは鮮度を保つためすぐに日陰に移動します。
ホップのツルや葉には細かなトゲがあるため、作業は長袖推奨です。

ホップのツルを特製の鎌で切り落とす社長。 切り落としたホップは鮮度を保つためすぐに日陰に移動します。 ホップのツルや葉には細かなトゲがあるため、作業は長袖推奨です。

SanktGallenBrewery / 元祖地ビール屋 サンクトガーレン さんの投稿 2018年8月2日木曜日


毎年、この後はツルからホップをプチプチと根気よく摘み取る作業をしていました。

1時間で1人2㎏程度しか摘み取れず、浅川さんに「ホップ栽培で1番大変なことは?」と聞いたら、「収穫」という答えが返ってきたほどでした。

ホップの収穫は時間と根気が必要です。 プチプチ1粒ずつ摘んでいくのですが、1kg摘むのにだいたい2時間かかります。 このホップは明日YOKOHAMA XPA(IPA)の仕込みに使い、8月下旬から販売予定です。 http://www.sanktgallenbrewery.com/news/freshhop.html

SanktGallenBrewery / 元祖地ビール屋 サンクトガーレン さんの投稿 2017年8月3日木曜日


でも、今年は違います。

3年ほど前から北杜市内に浅川さんの意思を継いで新たにホップ栽培をはじめた方がいます。

その方が国内に数台しかないホップの摘果機をお持ちで、それをお借りして一気にホップを摘み取りました。

日本に数台しかないホップの摘果機。 北杜市内で新たにホップ栽培をはじめた方が導入したものを昨年から使わせて頂いています。 ツルごとホップを流し込むと、千歯こき(脱穀機)のような機械が葉と枝とホップを切り離していきます。 重い枝は下に落とされ、逆に軽い葉っぱは風で後ろに飛ばされ、その中間の重さのホップだけが残っていきます。 最後の選別は人の目で。ベルトコンベアをずっと見ていると目が回ります…。

SanktGallenBrewery / 元祖地ビール屋 サンクトガーレン さんの投稿 2018年8月2日木曜日


ツルごとホップを機械に流し込むと、千歯こき(脱穀機)のような機械が葉と枝とホップを細かく切り離していきます。

その後、重い枝は下に落とされ、軽い葉っぱは風で後ろに飛ばされ、その中間の重さのホップだけが最後まで残って回収される仕組みです。

ちなみに葉っぱは結構な風量で吹き飛ばされ、最後に後ろにたまった葉の掃除(回収して畑に戻す)のが割と大変でした。

台風接近に伴い風が強まってきました。 皆様、帰路お気を付けて。 この動画は暴風の影響を受けたホップ…ではなく、先日のホップ収穫のときのもの。 ホップ摘果機内ではツルごと投入したホップが、葉と枝と毬花(ホップ)に切り分けられます。 その中で1番重いホップの枝部分は機械の下に落ちていき、1番軽い葉の部分はこんな風に機械の後ろに風で吹き飛ばされていきます。 中間の重さのホップだけが、最後まで機械に残り、回収されます。 最後、吹き飛ばされた葉っぱの掃除(集めて、畑に戻す)が今年のホップ摘みの1番の重労働だったかもしれません。

SanktGallenBrewery / 元祖地ビール屋 サンクトガーレン さんの投稿 2018年8月8日水曜日

最後の選別は人の目で。ベルトコンベアをずっと見ていると目が回ります…。

収穫したホップの半量はすぐに厚木の工場に持ち帰り“生”のままビールの仕込みに使用。

ホップは松ぼっくりのような形で、その1枚1枚の根元にビールの香りと苦味のもとになるルプリンがあります。

ルプリンを抽出されやすくするため、仕込み前にはホップをむしってむしってむしりまくります。

松ぼっくり状のホップを1枚1枚の葉っぱに分解してしまうイメージです。

今日は昨日収穫してきた“かいこがね”ホップでビール仕込みでした。 ホップは松ぼっくりのような形で、その1枚1枚の根元にビールの香りと苦味のもとになるルプリンがあります。 ルプリンを抽出されやすくするため、仕込み前にはホップをむしってむしってむしりまくります。 松ぼっくり状のホップを1枚1枚の葉っぱに分解してしまうイメージです。 ‪新人スタッフに「むしって」と頼んだら、ホップをガバッと掴んで、おにぎり🍙を握るようにギュッギュッとしていたのは発音が悪かったのか、それとも彼が天然なのか…。‬

SanktGallenBrewery / 元祖地ビール屋 サンクトガーレン さんの投稿 2018年8月3日金曜日


ホップは毎年YOKOHAMA XPAの生ホップバージョンとして製造・販売していましたが、今年は全く新しいIPAを仕込みました。


海外のホップに比べると国産のホップの香りは繊細です。

その繊細な香りを存分に引き出すべく、ボディ(糖度)は限りなく軽く、NE-IPA並みに大量のホップを殆ど加熱せずに投入しています。


現在発酵中で、発売は8月下旬から9月初旬を見込んでいます。
発売情報を漏らさずチェックしたい方はメルマガ登録をお薦めします。

例年“かいこがね”のフレッシュホップはYOKOHAMA XPAの仕込みに使用していましたが、今年は全く新しいIPAを仕込みました。 ボディ(糖度)は限りなく軽く、NE-IPA並みの大量のホップを殆ど加熱せずに投入。 初めての素材を使ったため、マッシュ(粉砕した麦芽とお湯を合わせたドロドロのお粥状態のもの)を触って食べて確かめる社長。 現在、順調に発酵中です。

SanktGallenBrewery / 元祖地ビール屋 サンクトガーレン さんの投稿 2018年8月6日月曜日



ここ数年、クラフトビールブームとともに国産ホップに注目が集まっています。

国産ホップは生産者の高齢化や後継者不足などで生産量減少の危機にあるそうです。

大手メーカーさんが、そんな日本産ホップを守っていきたいと活動をはじめました。

でも、そもそもなぜ国産ホップの栽培が衰退してしまったのか、それを考えると複雑な気持ちもあります。
どうか一時的なブームで終わらず、この流れが継続しますように。

「これまで20年、誰も使ってくれなかった」

この浅川さんの言葉が届いてほしいと願うばかりです。

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